Je veux le protéger
薫side
理櫻が倉庫に来なくなってから半月。
いつも早めに来るのだが、それよりも少し早めに来てしまった俺は、静まり返った校舎をのんびりと散歩していた。
うちの家はかなり荒れてる。
父親は外に母親とは違う相手がいて、母親は水商売。
しかも、母親は母親で外に相手がいる。
唯一まともなのは6つ離れた兄だろうか。
俺は馬鹿な親に馬鹿みたいに反抗して夜遊びとかしてたけど、兄だけは親の代わりに俺のことを怒ったり褒めたり……本当に出来た兄だと思う。
その兄も最近結婚をして家の近くではあるものの家を出ている兄。
つまり俺は馬鹿な親と三人暮らしってわけだ。
まあ物心ついてしばらくは親達もまともを演じてたらしいから、いい家庭だったと言えるだろうから特に気にしてるわけじゃない。
けど、家にいるのは息がつまる。
兄は心配して一緒に暮らそうと提案してくれている。
兄の奥さんもとてもいい人で、俺のことを快く迎えてくれると言ってくれている。
それでも、新婚の家に押しかけるほど俺は神経が図太く出来ていない。
だから普段はヘラヘラ笑って倉庫に居座って、朝は早く来て静まり返った校舎を歩く。