政略結婚ですがとろ甘な新婚生活が始まりました
7.未来を一緒に
彼は私をまるでお姫様のように扱ってくれる。
いつも私が何かを感じる前に準備をしてくれる。
私への最善をいつも考えてくれる。

「彩乃、疲れた?」

結婚指輪を選び終えた後、口数の少なくなった私を気遣うように彼が声をかけた。私は慌てて首を横に振る。


こんなんじゃいけない……! 余計な心配をかけたくないのに。


「ううん、大丈夫!」
笑顔で返事をする。

「じゃあ、彩乃。これから顧客専用室に来てくれないか?」
「え?」

思わず首を傾げる。結婚指輪は買い終えた。ほかに何があるのだろう。


「来週末のパーティーの衣装を決めたいんだ」


ふわりと柔らかな笑みを浮かべる彼。その目はとても甘くて優しい。まるで私に選択権を与えてくれているようだ。


「一緒にパーティーに参加してくれませんか?」


そう言って彼は私に手を差し伸べる。物語のお姫様が舞踏会で王子様にダンスに誘われるような仕草。

そんな彼の姿に思わず泣きたくなる。甘やかな痛みが胸を締めつける。


ああ、もう、断るわけなんてないのに。


優しいこの人は私に選ばせようとしてくれる。
パーティーの参加者は今回の事業に関係する会社関係者はもちろん、私の会社の社長も参加する。名実ともに私が彼の妻だと世間にお披露目する場になる。それでもいいかと彼は暗に問うてくれている。

よく見ると、彼の漆黒の瞳がほんの少し不安そうに揺れている。この人の憂いを取り除きたい、心からそう思った。


「喜んで」


涙をこらえて微笑む私を、彼が眩い笑顔で抱きしめてくれた。
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