政略結婚ですがとろ甘な新婚生活が始まりました
「た、環さん! 人前です!」
思わず叫ぶ私に彼が色気のこもった声で囁く。
「可愛いお姫様が誰かに奪われないようにしているだけ」
余裕の笑みで返す彼に、どんどん真っ赤になっていく頬を隠す自信はない。
後ろに控えていた平井さんに『奥様を見世物にするつもりですか』とお小言を言われ、渋々私を解放してくれた彼と手を繋ぎ顧客専用室に向かう。
平井さんが秘書というよりだんだんお目付け役のように見えてきた。
案内された場所は以前に婚約指輪を選んだ場所とはまた違う部屋だった。豪華な内装は変わらない。
ドアを開けて足を踏み入れた先に、トルソーに着せられた一着のドレスがあった。
胸元がスクエアにあいたもので胸の下で白からパウダーブルーに切り替わっている。裾は柔らかく広がり、細かい白い花のレースが透けている。
「……これ」
その繊細な美しさに言葉を失う。
「彩乃の会社と我が社でデザインしたドレスなんだ」
背後からドアを閉めた彼が言う。平井さんはほかの打ち合わせのため席を外している。
「……彩乃の意思を確認せずに、勝手なことをしてごめん。今度着手する複合施設には彩乃の会社もテナントを出店予定だ。目玉になる商品を検討していた時に浮かんだのがこのドレスだったんだ」
私の会社には小売り店がある。百貨店に卸している商品もあるが、そこが直接我が社の商品を販売している。
毛織物だけではなく、珍しいケースだが、デザインのみの取り組みもある。今回はそのケースだったのだろう。
「ウェディングドレスはまだ先になるから、その代わりとして俺の気持ちを彩乃に伝えたかったんだ。このドレスを着て、パーティーに一緒に参加してほしかったから」
彼は照れ臭そうに髪をかき上げて言う。自信家の彼の意外な姿に胸がいっぱいになる。
こんなにも繊細で豪華なドレス、一朝一夕で作り上げることはできない。きっと長い時間と膨大な労力がかかっている。
思わず叫ぶ私に彼が色気のこもった声で囁く。
「可愛いお姫様が誰かに奪われないようにしているだけ」
余裕の笑みで返す彼に、どんどん真っ赤になっていく頬を隠す自信はない。
後ろに控えていた平井さんに『奥様を見世物にするつもりですか』とお小言を言われ、渋々私を解放してくれた彼と手を繋ぎ顧客専用室に向かう。
平井さんが秘書というよりだんだんお目付け役のように見えてきた。
案内された場所は以前に婚約指輪を選んだ場所とはまた違う部屋だった。豪華な内装は変わらない。
ドアを開けて足を踏み入れた先に、トルソーに着せられた一着のドレスがあった。
胸元がスクエアにあいたもので胸の下で白からパウダーブルーに切り替わっている。裾は柔らかく広がり、細かい白い花のレースが透けている。
「……これ」
その繊細な美しさに言葉を失う。
「彩乃の会社と我が社でデザインしたドレスなんだ」
背後からドアを閉めた彼が言う。平井さんはほかの打ち合わせのため席を外している。
「……彩乃の意思を確認せずに、勝手なことをしてごめん。今度着手する複合施設には彩乃の会社もテナントを出店予定だ。目玉になる商品を検討していた時に浮かんだのがこのドレスだったんだ」
私の会社には小売り店がある。百貨店に卸している商品もあるが、そこが直接我が社の商品を販売している。
毛織物だけではなく、珍しいケースだが、デザインのみの取り組みもある。今回はそのケースだったのだろう。
「ウェディングドレスはまだ先になるから、その代わりとして俺の気持ちを彩乃に伝えたかったんだ。このドレスを着て、パーティーに一緒に参加してほしかったから」
彼は照れ臭そうに髪をかき上げて言う。自信家の彼の意外な姿に胸がいっぱいになる。
こんなにも繊細で豪華なドレス、一朝一夕で作り上げることはできない。きっと長い時間と膨大な労力がかかっている。