政略結婚ですがとろ甘な新婚生活が始まりました
「ちょっと待って。話の意味がわからない」

親友が完璧に化粧を施した綺麗な顔を、大仰にしかめて話す。幼馴染でもある彼女、高倉 眞子(たかくら まこ)は営業部に所属している。

「まさかと思うけど、その別れを受け入れたの? 最近一カ月くらい会っていないって言っていたのにどうしてそんな話になるの?」

顎の下で切り揃えられたサラサラの黒髪を耳にかけながら言う。

対する私は背中半分くらいまでの焦げ茶色の髪を無造作に紺色のリボンバレッタで留めている。

昨日、眞子に隆と仕事帰りに会うことを伝えていた。

最近の彼は仕事が忙しい、急な出張が入った、とよく言っていた。連絡も途絶えがちで、私がメッセージを送ってもほとんど返事がこなくなっていた。

避けられているのかもしれない、と返事の返ってこないスマートフォンを握りしめて何度も思った。

私たちの仲を心配してくれていた眞子に昨夜の様子を話すため、会社近くのスープ専門店で昼食をとっていた。ここならば、社内の人目をあまり気にしなくてすむ。

このお店は数種類のスープの中から二種類のスープが選べ、さらにご飯とサラダもセットになっている。リーズナブルな価格も魅力で女性に人気だ。

真っ青な外壁に白い文字、大きなガラス扉とお洒落な外観が目を引く。十席ほどのテーブル席はすでに満席だった。

私たちは一番奥のテーブル席に腰をおろしている。向かい側のソファ席に座っている親友に厳しい目で見つめられる。

水を運んで来てくれた店員にすかさず注文を告げた。店員が席から離れたのを見計らって改めて事情を伝える。
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