サイレン


鼻歌を唄いながら仕込んだものを、使い捨てのパックに詰め込んだ。
大食いのようなので、見た目には三人前は余裕であるだろう。

大きな袋を抱えるようにして、電車を乗り継いでタクシーに乗り込む。
途中でコンビニに寄ってもらい、店内の缶コーヒーの一部を買い占める。小さめのサイズのものをすべてカゴに入れて会計へ持っていった。

タクシーへ戻ると、私の大荷物を見た運転手さんに尋ねられた。

「すごい飲み物の量ですね。今日はなんか打ち上げでもあるんですか?」

「いえ、討ち入りです」

「─────はあ」

こいつはヤバい客だと悟ったのか、それきり話しかけてこなくなった。


すっかり日も暮れて、外は暗い。
ネオンが流れていくのを眺めながら、短期決戦に挑む自分の勇気に賛辞を送りたくなった。

だって仕方ない。
会いたいんだもの。

車が揺れるたびに、たくさん買った缶コーヒーたちがカチャカチャと音を立てる。そちらには目もくれず、手の中にある袋を大事に抱えた。


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