愛って何よ?
宿泊する部屋のある階へ着いたけれど、右手は未だに握られたまま。

エレベーターを降りるとようやく野村くんが私の方を向いた。

「話をしたいです。
俺の部屋か早川さんの部屋、どっちが良いですか?」

視線は真剣そのものだけど、無表情で心の内は全く見えない。

しかも部屋って、それしか選択肢はないのか…。

「さ、さっきのカフェ…とかは?」

野村くんのいつもと違う態度が恐くて、二人になる事を出来れば避けたかった。

「…何もしないよ。ただ人には聞かれたくない」と私の思いを理解してくれたのか野村くんはそう言って顔を反らした。

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