愛の囁き☆私は強くない番外編☆
「だ、大丈夫です。い、いきますよ」

クスッと拓真が笑った。
笑っている事に、気付かず香里は点滴の針に集中していた。
そして、その真剣な表情に見入っていた拓真にも気付いていなかった。

「はい、痛くなかったですか?30分ぐらいで終わると思うので、終わる頃にまた見に来ますけど、終わったらこれで読んで下さいね」

私は拓真さんに、ナースコールを渡しながら話した。

「痛くなかったよ、ありがとう」

「よかったです。じゃ」

頭を下げて処置室を出た。


今日ほど緊張した事なかったな。
けど、上手くいってよかった…

私は時々、処置室を覗きながら、仕事を進めていた。

点滴の滴下の状態を見ていた私は、そっとベッドの側まで近付い。
拓真さんは、静かに眠っていた。

疲れもあったようで、よく眠っていた。
見惚れそうになりながら、静かに声をかけた。

「もう少しで終わりですね」

「…ごめん、寝てたね」

「いえ、疲れもあったんじゃないですか?少し楽になりました?」

「楽になったよ。これで、仕事行けるかな」

「今日ぐらい、休んでも大丈夫じゃないですか?」

「そうしたいけど、無理なんだよね」

そんな話をしながら、針を抜いた。
針を入れた時に比べると、抜く時はそんなに緊張せずに済んだ。

こんな時に仕事休めないなんて、大丈夫かな。
熱もまだあるのに…

拓真さんは微熱だから大丈夫、って言ってるけど。


「明日休みだから、大丈夫だよ。心配してくれてありがとう」

「そうですか?無理しないで下さいね」

「無理はしないけど、香里ちゃんが看病してくれるんだったら、病気もいいかな、って思っちゃうね」

拓真さんは微笑みながら、私に話をするもんだから、またドキドキが始まっていた。
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