愛の囁き☆私は強くない番外編☆
翠が私の部屋に泊まっていった。
仕事が二人とも休みだから、と。そして、拓真さんとの話をする為に…

「香里、もし結婚しよう、って言われたらどうする?」

「言って…くれるのかな…昨日の感じじゃ、堕ろしてくれって言われそうだよ」

自虐的に笑えてきた。
今の自分の立場に…ふっ、情けないな。泣き疲れて涙ももうないと思ってるのに、溢れ出てくるのはなんでなんだろう。

「私は…奥菜さんがそこまでクズなんだったら、会社に乗り込んでやるわね」

「そ、そんな…翠。そこまでしなくていいよ。ありがと、私もまだどうしていいのか分からないから…だけど、翠どうしてここまでしてくれるの?私、悪いよ、こんな嫌な役目を翠にしてもらうなんて…」

翠は、一度天井を見てから私に向かって言った。

「実はと言うと、私もね、一度妊娠騒ぎ起こした事があるの、学生の時に。相手の人は高校の時の同級生」

「え?そ、そうなの…」

「うん。その時は、堕ろしくれ、って言われてね、私。ま、私の場合は判定する前に、生理になったからただの不順ですんだんだけど。男って勝手よね、簡単に出来てたら堕ろしてくれ、って言うんだから。だから許せないの」

私は聞いた事がなかった翠の告白に、また涙を流していた。

翠も同じ苦しみを味わった人だからこそ、私の痛みが分かるんだと。
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