愛の囁き☆私は強くない番外編☆
拓真さんと会ったあの日から数日、私は仕事で忙しい毎日を送っていた。

まだ、あの事を笑って話なんか出来ないでいたけれど。


そんなある日の事だった。


「すみません、これ、落としましたよ」

「え?」

休みの日、買い物に出かけた私に誰かが声をかけてきた。
声がする方を、振り向いた私はびっくりした。

「あ、これ、君のだよね?」

私のだよね?と手にパスケースを持ったその人が立っていた。

「え?あ…、橋本さん?」

「えっ…、あ、浜口さん?あ、
久しぶり…、これ君のだよね?」

「あ、ご、ごめんなさい。私のです」

落とした事に気がついてなかった私は、橋本さんからパスケースを受け取った。

「さっき財布出した時に落としたんですね、すみません。ありがとうございました」

「今日は休み?俺も休みだから、ブラブラしてたんだ」

「あ、そうなんですね。私も同じです」

改まって何かを話すのも、なんだか気が引けて、他愛のない話をした。

橋本さんは、拓真さんと同期の人で、合コンから、あの話し合いの時にもいた人。お互い顔を合わすのはあの日以来だった。

どこで話を切ったらいいのか、分からないまま、困っていると橋本さんが、話を切り出してくれた。
< 91 / 93 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop