一途な騎士はウブな王女を愛したくてたまらない
イアンはオースティンに軽く手を上げて挨拶すると、難しい顔でメアリを真っ直ぐに見つめる。
「メアリ王女。お話があります」
固さを含んだ声色と、眉間のシワ。
これはまさか昨夜ユリウスと城を抜け出したのがバレたのではないかと、メアリは緊張し唾を飲み込んだ。
一体、どこでバレたのか。
門番たちは誰もメアリに気づいた様子はなかった。
交代の時間を見計らい、ユリウスがうまく気をそらしてくれたのもあるが、門を照らす松明の炎ではメアリだとハッキリわかることはないとユリウスも言っていたのを思い出す。
自室に戻る間も特に問題はなかったはずだ。
すれ違う者たちに挨拶した時等、思い返してみても訝しまれた様子は見られなかったというのに。
「メアリ王女?」
返事もせず視線を揺らし黙りこくるメアリを不審に感じたのか、イアンに確かめられるような声をかけられる。
誤魔化して状況が悪化してもよくない。
メアリは正直に謝ることを選択し、勢いよく頭を下げた。