一途な騎士はウブな王女を愛したくてたまらない


「ユリウス……」


メアリが瞬きしながら名を口にすると、ユリウスは小さく頷く。


「メアリ王女はまだ正式に即位はしておりませんが、アクアルーナの民は王女が存命であったことを吉報としています。それは、亡きメイナード王が民に愛されていた王であった故の期待の表れ。王女が自ら出征したとあらば、民からの信頼を得るのみならず、軍の士気も上がりましょう」


まさかここでユリウスがメアリの援護に回るとは思わず、イアンは内心驚きながらも「一理あるが、危険も高まる」と冷静に告げた。

すると、重臣たちも同意する。


「王が亡くなり、今また王女まで失うわけにはいかない」


国の為、王女の為にと声にしたイアンだったが、そこにまたしてもユリウスが提案を持ちかける。


「何も戦場にでなくてもいいかと」


その言葉に乗ったのはオースティンだ。


「なるほど。フォンタナを拠点とし、戦場はロウとフォンタナの中間にあるフェガリ平原にすればいいというわけか」

「はい」


頷くユリウスに、ルーカスが肩をすくめながら首をひねる。


「そううまくいくか? ヴラフォスの進軍速度が早ければフォンタナが乗っ取られるだろう」

「いえ、ロウからフォンタナに向かうには迷いの森を通るか、街道を行くしかない」


< 114 / 330 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop