一途な騎士はウブな王女を愛したくてたまらない
迷いの森はその名の通り、下手に入り込むと迷って出てこれないと云われる森で、凶暴な魔物の巣窟にもなっている。
「故に何事もなく進軍することはほぼ不可能。であれば、必ず迂回し街道を進むはずです」
ユリウスの断言に、ルーカスが「森を焼き払うかもしれないぜ?」とからかうとオースティンが「ヴラフォスならやりそうだな」と苦笑してからイアンを見た。
「俺が先に王立騎士団の精鋭部隊と先行。メアリ王女率いる本隊は近衛騎士団と共に後続し、フォンタナで合流。これでどうだ?」
「イアン様、フォンタナへ行きましょう。大切な人を街を守る為に」
懇願するメアリに、イアンは深いため息を吐く。
「十日後の戴冠式はどうなさるつもりですか」
「フォンタナを守った後に見送りませんか。それにきっと、フォンタナが狙われている中で戴冠式を行うような者に民はついてこないんじゃないかと思うんです」
そこにどれほど重要な理由があったとしても、優先すべきは民の命。
メアリが医療に携わってきたことも影響しているが、王はなんのためにあるのか。
それを考えたら、救うことを第一に考えて生きてきたメアリが選ぶ道は一択しかない。
民のために。
その志は、メアリの父も常に持っていたものだ。