一途な騎士はウブな王女を愛したくてたまらない
そうして、慌ただしくも時間は過ぎていき──ついに出征の朝。
メアリは自室に立てかけられた姿見の前に立ち、鏡の向こうに映る自らを緊張した面持ちで見つめていた。
メアリが纏うのはいつものブラウスとビスチェワンピースではなく、金の模様が縁どる白銀の鎧と純白の生地で作られた丈の短いドレスアーマー。
レースがあしらわれたロングブーツの膝当てにはアクアルーナの紋章が描かれていて、背を覆う青いマントにも同じく紋章が入っている。
このドレスアーマーは、昨夜イアンから渡されたものだ。
父、メイナードがもしもの為にとオーダーしていたものらしい。
レザーのベルトホルダーにはメイナードが愛用していた片手剣と短剣が下がり、メアリは柄にそっと触れる。
(父様……私の為にありがとうございます)
父としての愛情を持ち、影ながら尽くしてくれていたことに深く感謝していると、騎士の鎧を身につけたユリウスがやってきた。
「メアリ王女、おはようございま……す……」
尻すぼんでいくユリウスの声。
その双眸はメアリの姿をしっかりと捉えてはいるようだが、驚きに満ちている。