一途な騎士はウブな王女を愛したくてたまらない
顔を上げ目を見張るメアリに、ユリウスはいつものように柔らかく微笑する。
「俺は、君に守ってもらえるような価値のある人間じゃない」
その笑みに似つかわしくない台詞に、メアリは大きな瞳を不安で揺らし、そういえば、以前も似たようなことがあったと思い出した。
『それは……本当の俺を知らないからだよ』
柱廊の下。
冷めた声色を聞き、ユリウスを怒らせてしまったのではと心配した時のことを。
ユリウスは、自分を偽っているのか。
価値がないと考えるほどに。
「ユリウス……」
「優しいメアリ。俺はいつかきっと君を傷つける。だから君は、この先何があっても俺を守ろうとはせず、自分が生き延びることだけを考えて。何があっても」
いつのまにかユリウスの顔から笑みが消え、残るのは真剣な眼差し。
「何を、言ってるの?」
「どうか、約束を」
ユリウスがなぜ自分を傷つけるのか。
忠誠を誓いし近衛騎士である彼が、なぜ。
湧き上がる疑問を声にしたら、ユリウスは答えてくれるだろうかとメアリは思案したが、すぐに自分で否定する。
簡単に答えがもらえるなら、最初から全て説明するはずだからだ。
語らないということは、語れない理由がある。
それが何かはわからないけれど、何があっても生きろと言うのなら、少なくともユリウスはメアリの身を案じている味方なのだ。
「……わかりました」
ユリウスを守ること。
それを諦めるつもりはなく、けれど口にすることはせずに頷くと、ユリウスは「ありがとう」と安堵し目元を緩めた。