一途な騎士はウブな王女を愛したくてたまらない


──白馬に跨り、優しいブロンドの髪を風になびかせる。

雲ひとつない、海の色にも似た空の下。

メアリは先程ジョシュアから手渡されたたくさんの薬草が入った布袋を馬の鞍にかけた。

急患の為、見送りができなくなったジョシュアは、王女の立場など関係ないとばかりにエントランスホールでメアリを力強く抱き締め『君の帰りを誰よりも強く祈っている。だから、必ず僕のこの腕の中に帰っておいで』と熱烈な愛情を持って送り出しくれた。

変わらずに接してくれることが嬉しかったメアリは、涙ぐみながら『はい、先生』と抱き締め返した。

伏せていた瞳を上げて、メアリは固く決意する。


(必ず帰ろう。自分にできることをし、守れるものを皆と一緒に守り抜き、何があっても、必ず)


父から受け継いだたくさんのものを守る為に。

あの日、この道を選んだことは間違っていなかったと胸を張れるように。

メアリは、跨る白馬のさらりとしたたてがみを撫で、腰から下がる剣の柄頭に触れた。


「開門!」


背後から淀みのないイアンの声が響くと、重い門が開いていく。

メアリは息を吸うと、希望と不安を胸に手綱を強く握りしめ、ゆっくりと前進しアクアルーナ城の門をくぐり抜けた。

メアリの右側には騎士の甲冑を纏ったルーカスとウィルが。

左側には同じく凛々しい騎士姿のユリウスと、弓を背負ったセオが馬に跨っている。

前方では大きな旗が風を受けて揺れていて……。


それはまさしく、メアリが視た予知夢の光景そのものだった。













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