一途な騎士はウブな王女を愛したくてたまらない


ジャバウォック。

その魔物の名を耳にした瞬間、共にいたユリウスの顔つきが険しいものに変わった。


「ジャバウォックは仕留めたのか?」


ユリウスが確認すると、近衛騎士は「はっ、そのようです」と答える。

さらに聞けば、重傷者は医療部隊の者が多く、現在町の外で応急処置をしているが手が足りないとのことだった。

メアリは眉をハの字にし、騎士の目つきをしたユリウスの横顔に声をかける。


「ジャバウォックはロウへ向かう街道に現れていたはずじゃ……」


普段は森に生息している羽根のないドラゴンのような姿をしたジャバウォック。

素早さはないものの、長い鉤爪と鎧をも砕くという強靭な牙に攻撃されたらひとたまりもなく、鍛錬を重ねた騎士が数人いても手を焼く相手だ。

たが、そのジャバウォックが住むと言われる森はロウに近い場所にあり、この辺りでの目撃情報は耳にしたことがない。

不審げに首を捻るメアリに、ユリウスは「先日のヴラフォスとの戦闘の影響で場所を変えたのか、もしくは別のジャバウォックなのかもしれません」と返した。


< 123 / 330 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop