一途な騎士はウブな王女を愛したくてたまらない


ユリウスに促され彼の愛馬に跨ったメアリは、後ろから腰を支えられて宿場町を発つ。

父が他界した日、同じように幼馴染のウィルと馬に乗ったけれど、こんな風に腰に手を回されてはいなかったことを思い出した。

ユリウスとの距離がいつもよりぐっと近づいている。

そんな場合じゃないことをメアリは重々承知しているが、それでも耳元で「しっかり掴まっていて」と気遣わしげに言われると、心拍数が上がってしまう。


(い、今は怪我人のことだけを考えないと)


馬が駆けるリズムに合わせ、目的に集中して山沿いにアールを描く道を進んで間もなく、ジャバウォックに襲われたと思わしき兵士たちを見つけた。

腕を押さえて歩いている者、動くことが出来きないのか荷車に横たわる数名からは呻き声が聞こえる。

その少し後ろに、怪我人を自分の馬に乗せ足を引きずって歩くセオを見つけた。


「セオ!」

「セオさん!」


ほぼ同時にメアリとユリウスの声が重なると、セオが手綱を引いていない方の手を大きく振った。


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