一途な騎士はウブな王女を愛したくてたまらない
「ユリウス隊長! メアリさん……じゃなくて、王女様!」
呼び直したセオの声は元気そうで、メアリは安堵しながらユリウスと馬を降りる。
「ジャバウォックにやられたのか?」
「すんません。油断して、爪で」
ユリウスに頭を下げるセオの足はブーツが破け、血が染み込み赤黒く変色しており、メアリは眉根を寄せた。
「セオさん、傷を見せてください」
「俺よりあいつを先にお願いします。ひどい怪我してて」
そう言って、荷車で呻く兵士を指さす。
確かに彼を先に診た方が良さそうだと感じ、メアリは「わかりました」と頷いた。
「でも、あなたも治療が必要だからあまり無理せずにいてくださいね」
「はい、メアリさ……じゃなくて、王女様!」
またしても間違いかけたセオに微笑みかけ、メアリは急いで重傷者へと駆け寄る。
荷車に乗る者たちは皆それぞれに早急な治療が必要そうなのが一目でわかり、メアリは辺りの兵を見回した。
「医療部隊の方で動ける人はいますか!?」
「お、俺は軽傷です!」
「俺もです、王女様!」
数名が手を挙げ、メアリは彼らの手を借りつつ応急処置を施していく。