一途な騎士はウブな王女を愛したくてたまらない
ジャバウォック討伐後、重傷者にはひと通り止血などの処置は行なっていたようで、幸いにも今すぐ命に関わるようなレベルの者はいなかった。
けれど、数日は動けないだろうという状態であり、何名かはこの宿場町で療養が必要そうだとメアリは見立て、ジョシュアからもらった痛みを抑えるフィッシュハーブをすり潰して作った傷薬を塗り込む。
「すみません。王女様に治療を手伝っていただくなど……」
無事だった医療部隊のひとりが申し訳なさそうに口にし、メアリはゆるりと首を振った。
「私は王女になったけど、国や民の為に働く騎士団や兵士の皆さんに敬意を持つ心は変わりません。立場は変わってもあまり気にせず、不甲斐ない私の背中を押して一緒にアクアルーナを守ってもらえると嬉しいです」
「は、はい!」
白いブーツや手を血で汚すのも厭わず微笑するメアリの姿に医療部隊や治療を受ける兵士だけでなく、様子を見守っていた者たちの表情が明るいものに変わる。
忠誠を誓うべき王女に頼りにしていますと言われ、彼らの士気が高まっていく。
セオから状況の確認をし終わったユリウスはその光景を少しだけ離れた場所から眺め、メアリの王女としての素質を肌で感じていた。