一途な騎士はウブな王女を愛したくてたまらない
遠慮がちに扉が開くと、鎧を外し外套と騎士服だけになったユリウスが一礼する。
「失礼します。先程のお礼に参りました」
「お礼、ですか?」
扉を閉めたユリウスは、小さく頷くと淡い笑みを浮かべた。
「騎士や兵たちの為に尽力下さったことです」
「い、いえ! お礼だなんて! 私は自分ができることをしただけです。でも、それも最後までお手伝いできず中途半端になってしまったんですけど」
眉を下げて笑んだメアリにユリウスは首を左右に振る。
「いえ、あなたが以前と変わらず分け隔てなく尽くす姿は、たくさんの者の心を打ったようです。宿に戻る前にも、セオの傷を気にして探し、薬を渡してくださった。本当にありがとうございます」
品のあるお辞儀をするユリウスは、ふたりきりにも関わらず丁寧な言葉を使っており、それを些か寂しく感じていたメアリだったが、そんなことを考える余裕は瞬きをするよりも早く消え去った。
メアリの双眸が熱を持ったのだ。
あ、と思った時には、メアリの意識はもう予知の世界へと引っ張られていた。