一途な騎士はウブな王女を愛したくてたまらない


「はい。おやすみなさい、ユリウス」

「おやすみ、メアリ」


微笑んで背を向けたユリウスは、扉を閉める前にメアリを見つめた。

まだ何か話しがあるのか。

もしややはり瞳の変化に気づかれいたのかと、再び緊張に身を固くしたメアリだったが……。


「自分で訪ねておいてなんだけど、その姿で簡単に男を部屋に入れるのはやめた方がいい」

「え?」


困った顔で言われて、メアリは自分の体に視線を落としネグリジェ姿であることに気付いた。


「あああああ! ごめ、ごめんなさい!」


今まで夜に部屋を訪ねてくるのはジョシュアくらいしかおらず、あまり気にしたことはなかったが確かにこの姿で男性に会うのははしたないと、メアリは顔を真っ赤に染めてガウンの前みごろを手で寄せる。

イアンが相手なら間違いなく説教されたであろうと恐ろしい想像をしつつ、けれどユリウスに見せてしまったのもまた居たたまれずメアリは思わず背を向けた。

すると、ユリウスから小さな溜め息が聞こえて、メアリは呆れられたのかと不安に瞳を揺らした直後。


「君が王女だなんて、神さまってやつは本当に俺に対して意地が悪いな」


呟いた言葉の意味が良いものなの悪いものなのか。

気になって振り向いたけれど、同時に扉は閉ざされてしまい、メアリは前みごろを手繰り寄せていた手の力を緩めることしかできなかった。




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