一途な騎士はウブな王女を愛したくてたまらない
翌朝、メアリは身支度を整えるとすぐにイアンの部屋の扉叩いた。
「イアン様! 起きてください!」
「メ、メアリ王女、どうか落ち着いてください」
警護をしている近衛騎士になだめられて、メアリは「ごめんなさいっ、でも早く相談したくて」と落ち着かない様子で扉の前で足踏みをする。
すると、目の前の扉が少し錆びついた音をたてて開いた。
「……メアリ王女。もう少し慎まし」
「お小言は後で聞きますから! 今はどうかお話を聞いてください!」
「いったい何の話ですか」
「え、と、それは」
予知の話です、とは近衛騎士の前では言えず、メアリが「ざ、懺悔を」と思いついた理由を苦し紛れに吐く。
もちろん騎士は目を丸くし、イアンは「は?」と素で声にしたのだが、メアリは騎士に愛想笑いをしつつイアンの部屋に入って扉を閉めた。
イアンは支度の途中だったのか、寝台横の机に置かれたスケイルアーマーを手に取る。
「あいにく私は神父を生業にしていないんだが」
「咄嗟にそれしか思い浮かばなかったんです!」
「で、こんな早朝から落ち着きなく何の話ですか?」
「視たんです。未来を」
メアリが声を抑えて伝えると、スケイルアーマーに腕を通したイアンの顔つきが真剣なものに変わる。