一途な騎士はウブな王女を愛したくてたまらない


「どんなものを?」

「赤い旗の軍に、私たちが襲われていました」


メアリは数時間前、脳内に描かれた光景を思い出しながら答えた。


「その旗に剣とワシのマークは」

「そこまで詳しくは見えなかったけど、赤いのは確かです」


青い空に、良く映えていた血のようなあの色はハッキリと思い出せる。

メアリの返事に、イアンは「兵の数は?」とさらに質問を続けた。


「わかりません。でも、こちらがみんな大怪我を負っていて劣勢でした」


思い出すだけで胸が痛くなる光景。

ウィルが、ルーカスが、近衛騎士の者たちが、あちこちに傷を受け身体中を血に染めていた。


「劣勢になるほどの兵数となると、そこらの山賊ではなくヴラフォス帝国だな。場所や時間は視えたので?」

「いえ、ただ、街ではなかったです。それと、明るい時間で、あとは、ルーカスにフォンタナへ走れと馬に乗せられ、私は戦場を振り返りました」

「あなたを平原での戦場に出す予定はない。であれば、フォンタナに到着する前か……」


緩く握ったこぶしを顎に添え、ぶつぶつと唇を動かすイアン。


< 134 / 330 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop