一途な騎士はウブな王女を愛したくてたまらない
「ごめんなさい。ハッキリとわかるものが視えなくて」
太陽の位置や場所の目印になるものがわかれば良かったのにと悔やんでいると、イアンはモノクルを装着する。
「いや、ルーカスがフォンタナまで走れと言っていたのなら、この辺りではなく更に先、次の宿場町以降で攻められる可能性が高いのはわかりました」
この辺りで戦闘になるなら、フォンタナよりもアクアルーナに戻る方が早い。
また、次の宿場町へ到着するのは予定通りなら夕刻。
宿場町に着く前に襲撃を受けたなら、向かうのは宿場町か、もしくは南東のセリニになるはずだとイアンは話す。
「メアリ王女」
「は、はい」
「私はここから別行動を取ります」
「別って、どうしてですか?」
どこへ行くのか。
危険ではないのか。
疑問を頭に浮かべるメアリに、ふちが銀色のモノクルをかけながら説明するイアン。
「ヴラフォスがフォンタナへ進軍するのがわかっている今、アクアルーナに戻ることはできません。先発のオースティンたちも待っている。また、フォンタナの為にと一度首都を出た王女が何も起きぬうちから撤退したとあっては民からの信頼も落ちます。ですから、私は敵襲に備えできる限りの手を打ちにセリニへ行きます」
話し終えると黒い外套を羽織りサーベルと呼ばれる反りのある剣をホルダーに差し込んだ。