一途な騎士はウブな王女を愛したくてたまらない


「わ、私?」


メアリが自分を指差すと、セオが首を二度ほど縦に振った。


「大胆に王女様を人質に! 王女を返してほしくば金を渡せ! ってやつっす」


山賊の真似なのか、声色を低くしたセオに、ルーカスの隣で聞いていたウィルが「一点突破か。あり得なくはないな」と淡々とした声で言う。

山賊が攻めてくるというのはイアンも除外していた予想だったが、一点突破で自分だけの周りを襲撃されたのなら、あの光景もあり得るのかもしれない気になってくる。


「山賊って、旗とか持ってる?」


騎士たちに聞くと、誰もが見たことはなく、耳にしたこともないと答えた。

ではやはりあれは山賊ではないのだろうとメアリはヴラフォスの可能性が強まったことに唇を噛んだ。

予知の中に何かヒントはなかったかと、視たものを思い出しながら馬の背に揺られ、けれど特に気づくものもないまま、ようやく訪れた夕暮れ。

予知で視た警戒すべき危険な時間は過ぎ、イアンの予測通り、ヴラフォスが攻めてくるのであればこの宿場町を越えてからだということにひとまず安堵する。

しかし気は抜けることなく、心配でほとんど眠れないままに迎えた朝。


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