一途な騎士はウブな王女を愛したくてたまらない
ここのところ体調が優れない王の為に、王宮の専属医師であるジョシュアは煎じた薬を定期的に渡している。
最近では、『メアリが煎じた薬はよく効く』と王が喜んでくれていた。
それが嬉しくて、だからこそメアリは薬草を自分で買いに行ったという理由もあったのだ。
「そうか……王の為に」
呟いたジョシュアは、切なそうに微笑むとメアリの頭をくしゃりと撫でる。
「でも、君に万が一のことがあれば、王も悲しまれるから」
その言葉を聞いたユリウスが小さく頷き口を開いた。
「王がメアリをよく気にかけてるのは、もしかしたら行方不明になっている王女様と重ねてるのかもしれないな。確か君と同じくらいの歳頃だろう」
産まれて間もない王女が何者かに誘拐されたことはメアリも知っている。
いや、アクアルーナに住まう者なら多くの人々が耳にする悲しい話だ。
何せ、王女が誘拐されて数ヶ月後、予後の悪い王妃が亡くなってしまったのだから。
短い期間に愛する者をふたりも失い、さぞお心を痛めたのだろうと、メアリは胸を悲しみに軋ませた。