一途な騎士はウブな王女を愛したくてたまらない
フォンタナに着く前にヴラフォス帝国が攻めてきた場合、ウィルは背後から飛んでくる矢に気をつけること。
ルーカスはメアリを逃した直後、近くにいるであろう槍兵に囲まれないように注意すること。
その細かいアドバイスは、当然ふたりを困惑させた。
「君は、まるで見てきたかのように言うんだな」
ルーカスが「いや、もしかして未来にでも出かけて見てきたのか?」と冗談めかして笑う。
さて、どう返すべきかと、メアリが用意していた正夢の話に絡めようと口を開きかけた時。
「俺は、どうすればいいかわかりますか?」
どこか考え込むような表情のユリウスから聞かれ、メアリは言葉に詰まる。
気づいたのだ。
そういえば、あの光景の中に彼の姿はなかったと。
いつも自分のそばにいて自分を守っているはずの彼が。
まさか見た予知より前の段階で倒れてしまったのではと震えた直後、辺りにドン、ドンと、空気を撼わす太鼓の音が響き渡った。
その途端、騎士たちの目の色が鋭いものに変化し、一斉にそれぞれの武器に手をかける。