一途な騎士はウブな王女を愛したくてたまらない


そこからは、予知した光景で見聞きしたものとほとんどが同じだった。

鋼がかち合う音があちこちから聞こえ、敵か味方か、呻き、昂る声が行き交う。

ただ、追い込まれてはいない。

警戒を厳にし、いつでも迎撃できるよう隊列を組んで進んでいたことが幸いしていた。

それに加え、メアリの言葉を胸に留め、敵の弓兵の動きをよく観察していたウィルも大きな負傷を免れ、頬や腕の擦り傷程度で済んでいる。

だが、ヴラフォス軍の戦力はアクアルーナ軍と拮抗しているため、追い払える程の戦果はあげられておらず、確実にアクアルーナの軍も動けなくなる兵が増えていた。


「このままじゃ埒があかないな」


ルーカスが舌打ちすると、ユリウスが「ならば一度押し上げよう」と提案する。

近衛騎士団が一斉に騎馬で斬り込み、ヴラフォスの戦線を崩す作戦だ。

陣形を乱せば穴ができ、そこをうまくつけば一気に優勢になり得る。

しかし、その作戦を決行するにはメアリの守りが手薄になるのが難点なのだ。

もしもさらにヴラフォスの兵が待ち伏せていて、メアリが狙われたら。

せめて自分の隊だけでもメアリを守り、最悪の場合は護衛をつけてフォンタナへ走らせるのはどうかとルーカスは考えたが、すぐにメアリの言葉を思い出した。

メアリを逃す時、槍兵に囲まれないようにと言っていたのを。


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