一途な騎士はウブな王女を愛したくてたまらない
「まさか本当に未来を?」
馬鹿げた話だと鼻で笑うルーカスだったが、目の前の状況に八割はメアリの言葉を信じている自分がいる。
メアリが言っていたことが当たるとすれば、伏兵が潜んでいる可能性が高い。
ならば、斬り込むべきは今ではなく……と、脳内で作戦を練っていた時だ。
後方で戦っている兵から歓声が上がった。
何事かと皆がそちらを見やると、ヴラフォス軍が一気に引き、アクアルーナ軍が勢いよく蹴散らしている様が確認できた。
ただし、勢いの中心で剣を振るう集団は、アクアルーナの正規軍でない。
けれど、その者たちを引き連れ鼓舞する男の姿を見たメアリは瞳を輝かせた。
「イアン様!!」
アクアルーナの頼れる宰相が戻ってきたことに安堵し喜びの声をあげるメアリ。
騎士たちも歓喜の声をそれぞれに口にする中、ユリウスはそっと苦笑する。
「セリニの傭兵団……。なるほど、短時間で彼らを連れて来れたということは、この奇襲を予想していたということか」
続けて「さすが宰相殿だな」と称賛していると、イアンが馬で駆けメアリの元へやってきた。
「遅れて申し訳ありません!」
「いえ、ありがとうございます! 彼らは援軍ですか?」
「ええ。詳しい説明は後ほどします。メアリ王女。兵の士気が上がっている今、総攻撃の命を」
「わ、私がですか?」