一途な騎士はウブな王女を愛したくてたまらない
身のこなしから手練れであることがメアリにもわかり、その上、兜から覗く目が自分を捉えていて恐怖から背筋がぞっとする。
対峙しても勝てるわけがないのは明らかだが、それでも自身の身を守る為にと、メアリは剣の柄を握り直した。
迫り来る恐怖に胸の内で心臓が暴れ狂う。
そばにいたイアンも角の黒騎士に気付き、サーベルを構えた。
「あの角の兜……ザエル黒騎士長かっ」
苦々しい顔でイアンが名を紡ぐが、メアリにはその者がどんな人物であるかを問う余裕はない。
それはイアンも同じであり、防戦一方になることを覚悟し、メアリの前に出ようとした時だった。
ザエル黒騎士長を目がけ、馬が一騎猛スピードで駆けて迫り、メアリへと辿り着く前に一太刀浴びせる。
キンと高く伸びる金属音。
ザエルの剣が受け止めたのは、黄金色の瞳に鋭い輝きを乗せたユリウスだ。
兜の奥にあるザエルの双眸が驚きに染まる。
「っ……邪魔立てするとは……!」
「それはこちらの台詞だ、ザエル黒騎士長殿」
怯み、ユリウスの剣を押し返すと間合いを取り後退したザエル黒騎士長。