一途な騎士はウブな王女を愛したくてたまらない
──ヴラフォス軍が撤退したのは、ザエル黒騎士長が本隊に合流して間もなくだ。
黒騎士隊の猛攻に耐え抜き、大きな怪我もなくメアリの元に戻ってきた近衛騎士たち。
街道脇に倒れる者たちの姿には胸を痛めるばかりで、それでも今はこれ以上の犠牲がひとまず増えることのなくなった安堵感、そして自分の命も助かったという奇跡に泣き出したいくらいだったが、せめて頬を濡らすまいとメアリは必死に涙を堪えた。
「守ってくださってありがとうございます」
感謝の言葉を伝えながら騎士たちの手当てを手伝うメアリは、治療がひと段落すると辺りを見渡す。
ユリウスの姿がどこにも見えないのだ。
先程ルーカスからは、もしかしたら後方を任せた第四、第五部隊の近衛騎士たちのところにいるのかもしれないと言われた。
それならば確かめてくるとセオが馬を走らせたのだが、そのセオもまだ戻って来ていない。
イアンもセリニの傭兵団の元に行ったきりだ。
メアリが自分も探しに行こうと考え、そのことを伝えるべくルーカスと視線を合わせた。
しかし、メアリが口を開くよりも早く、ルーカスが微笑みを浮かべる。