一途な騎士はウブな王女を愛したくてたまらない


「驚いたな。まさかヴラフォスが山脈を越えてくるとは。メアリ王女、気分は大丈夫か?」

「は、はい」

「ジョシュア先生の元で働いてた君は治す為に傷は見ても、人が切られていくのを見るのは慣れていないだろう? 無理はするなよ」


気遣われ、メアリが「ありがとうございます」と微笑みを返すと、ルーカスは再び唇を動かした。


「それから、君の助言にウィルは助けられ、俺も伏兵の存在を意識することができた。ありがとう」

「いえ、そんな。こちらこそ、信じてもらってありがとうございます」


互いに礼を述べ合い、ルーカスが敬語を使うのを忘れていたとおどける。

けれど、その顔がすぐに真面目なものに切り替わった。


「ところで、メアリ王女。なぜ、伏兵がいることを知っていた?」


敵しか知り得ない情報を何故と、ルーカスは僅かに首を傾げる。


「万が一君が敵であれば、助けるような助言はしない。いや、君が敵とは考えにくいし、俺が聞きたいのはそこじゃないな。なぜ、これから起こることを知っていたのか、だ」


考えをまとめながら声にしたルーカスの疑問に、メアリはこくりと喉を鳴らした。


「ゆ、夢で……見たんです」

「夢?」


再度、ルーカスが首を捻った時だ。

ユリウスを探しに出ていたセオが戻ってきた。


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