一途な騎士はウブな王女を愛したくてたまらない


セオは馬の背から軽々と飛び降りると、メアリの前に立つ。


「メアリ王女様、ユリウス隊長はいませんでした。ただ、黒騎士長を追っていたのは確かみたいっす。兵たちが見かけたと言ってました」


ザエル黒騎士長を追ったまま帰ってこない。

その報告に、ルーカスは眉をひそめる。


「まさか、人質にとられたか?」

「人質!? そんな……」


メアリが動揺を隠せず山の方を見ると、セオが「探しに行きますか?」と尋ねた。

ヴラフォス軍は撤退する際に山の中へと入っていった。

怪我人がいることを鑑みれば山を越えるのは厳しいはずだが、アクアルーナ軍も追いにくくなるのは確か。

現にイアンは追撃はせずフォンタナに向かうことを優先とした。


(予知で見た光景にユリウスの姿がなかったのは、ザエル黒騎士長を追っていたからなのかも……)


ユリウスの無事を確認したい気持ちが大きいメアリは、セオに首を縦に振ってみせたかった。

過去の自由な自分であれば探しに行こうと言えたが、今は勝手が許される立場ではない。

それでも、ユリウスのことが心配でたまらないメアリは許可を得ようとルーカスを見つめた。

しかし、ルーカスは察知し即座に頭を振る。


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