一途な騎士はウブな王女を愛したくてたまらない


「お前は、フォンタナは初めてか?」

「え? 初めて……ではないみたいだけど、覚えてないから初めてみたいなものかな」

「じゃあ、滝のでかさはビックリしただろ」

「うん、驚いた。滝があるというのは知っていたけど、想像してた以上に大きくて迫力満点ね」


すぐに領主の屋敷に向かったので間近で見たわけではないが、それでも水が落ちていく激流音と辺りに満ちる清涼感たっぷりの空気は、メアリの心と体に蓄積された疲労を軽くしてくれるように感じた。

また、滝の裏には洞窟があるらしく、魔物が棲み着いているという噂があり入れないようになっていると、街の門を潜る直前にイアンから聞かされている。

それともうひとつ。

フォンタナはフォレスタットとの国境に近い街なので、自国のみならず同盟国の有事の際に備え兵も多いことも。

近衛騎士のようにひとりで一個小隊の強さを持つようなエリートは多くないが、フォレスタットから騎士や兵士が輩出することが多いというのを以前どこかで聞いた覚えがある。


「メアリ、散歩に出るなら付き合うぞ」

「え?」

「ジッとしてられないんだろ」


ウィルに見透かされたメアリは力なく苦笑した。


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