一途な騎士はウブな王女を愛したくてたまらない
フォンタナに至る道のりで魔物とヴラフォスの襲撃によって怪我人も多く出た。
それでもヴラフォスが攻め入ってくる限りは戦わなければならず、加えてユリウスの安否は未だ不明。


フォンタナをしっかりと守れるのか。

ユリウスは無事に帰ってくるのか。

ひとりの部屋にいるとそのことばかり考えてしまうのだ。

甘えてばかりもいられないけれど、気分転換は必要だと考えたメアリは、それならばと改めてウィルに向き直る。


「実は、イアン様の妹さんに会いたいと思っていて」

「イアン公爵の?」

「昔、少しの間お世話になったからお礼を言いたいの。付き合ってもらえる?」


ウィルは廊下の広い窓から見える景色を確認した。

空は夕刻に差し掛かり、橙色を滲ませ始めている。

王女があまりウロウロするのは良くないだろうことはウィルも重々承知だが、幼馴染の沈んだ表情を見たら首を横に振ることは出来なかった。

以前はよく見せてくれた明るいものに変えてやりたいと、ウィルはメアリと共に領主の屋敷を出る。


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