一途な騎士はウブな王女を愛したくてたまらない


イアンの妹が働いているというネロー修道院は、有事の際には避難場所となるようにぐるりと石造りの外壁が囲んでいる。

アーチ状の入り口をくぐり、綺麗な花々が咲き誇る中庭の中央に聖堂はあった。

その横にはフォンタナを見守るような高い鐘塔がそびえ立ち、メアリは花の香りを感じながらまずは聖堂に行ってみようと上部に信仰する神の姿が彫刻された扉に手を添えた時だ。


「また勝手に出歩くとは、あなたは自分の立場がまだわかっていないようだ」


覚えのある声に叱りつけられ、メアリは咄嗟にウィルの背中に隠れ肩をすぼめた。


「イ、イアン様、許可を得ようとはしたんですよ? でも、お出かけされたと聞いて、もしかしたら私の目的地にイアン様がいるんじゃないかな〜と思いまして」


ウィルの背後から顔を出して説明を試みるメアリと胸の前で腕を組むイアンの視線がぶつかる。


「それで勝手に領主殿の屋敷を出たと」

「きょ、許可をいただけますか?」


ぎこちない笑みを浮かべたメアリに、イアンが長い溜め息を吐き出した。

そして、その呆れた眼差しをウィルへと移す。


「ウィリアム。なぜメアリ王女をお止めしない」


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