一途な騎士はウブな王女を愛したくてたまらない
「独身でいるのはポリシーだ。俺の生きがいは家庭にはない。かつてはメイナードに、そして今はメイナードの愛娘であるメアリ王女に仕え支えるべきことこそが使命だ」
「ポリシーとやらでメアリ様を支えるのは結構ですけれど、メアリ様にミルクを与えたこともおしめをかえたこともない兄様が偉そうな口をきかないでくださいな。メアリ様をいじめたら私が許しませんわ」
「あ、あの、イアン様、ユリアナ様」
何やら言い争いを始めた兄妹をどうにか取りなそうとメアリが笑みを貼り付けて割って入ろうとした。
けれど、イアンはユリアナの正面に立つと鼻で笑う。
「いじめる? 俺がいつメアリ王女をいじめたと?」
「嫌味な言い方をしてるじゃありませんの」
「事実を言ったまでだ。王女がフラフラと勝手に出歩くべきではない」
「でも、きちんと騎士を護衛につけていますわ。そこは褒めて差し上げるべきところじゃなくて?」
火花が散るかのごとく言い合いを続ける二人。
止めるすべが見つからずオロオロするメアリに、オースティンが溜め息を吐きながら苦笑した。
「すまんな。こいつらは昔から顔を合わせるとこんな調子なんだ。おい、いい加減にしろ。ユリアナも、メアリ王女に会いたかったんだろう」
「そうでした。兄様のせいで感動の再会が台無しですわ 」
我に返ったユリアナは、イアンに向けていた冷めた視線が嘘ではないかと思うほど、慈愛に満ちた眼差しでメアリを見つめる。