一途な騎士はウブな王女を愛したくてたまらない
素直になれないウィルの頭をルーカスが可愛がるように撫で回す。
その手を鬱陶しそうにウィルが払うと、ルーカスは銀灰色の瞳でユリウスを見た。
「団長から召集がかかったぜ」
「何かあったのですか?」
予定にない召集命令に非常事態でも起こったのかと懸念するユリウスに、ルーカスは首を横に振ってみせる。
「いや、調印式のことらしい」
ルーカスが告げた”調印式”という言葉に、ユリウスはすぐさま納得し頷いた。
「わかりました。じゃあ、メアリ、お礼の件はまた」
もの柔らかい微笑と共に告げたユリウスに、メアリはふわりとボリュームのあるひざ丈スカートを手で押さえるように前で重ね、笑みを返す。
「はい。でも、私がさせてくださいね!」
「ハハッ、なかなか譲らないな。じゃあ俺は、お礼のお礼に君の誕生日を祝わせてもらうことにするよ」
それではお礼の意味がなく、先ほども気持ちだけで十分だと伝えたと返そうとしたが、背を向けてルーカス達と共に宿舎へと歩き出したユリウスを見て、メアリは開きかけた口を閉じた。
メアリの耳にも届いていた”調印式”という言葉があったからだ。