一途な騎士はウブな王女を愛したくてたまらない
ユリアナが願った十七年越しの誘いに、メアリは「ぜひ!」と喜んで頷いてから「あっ」とイアンを見て遠慮がちに訊ねる。
「あの、いいですか?」
「どうぞ。元々ここへ訪れたのは、ユリアナを領主の屋敷に連れていき、あなたに会わせる為ですから」
「そ、そうだったんですね。そうとは知らずに勝手に出向いてしまってごめんなさい」
申し訳なさそうに眉を下げたメアリに、イアンはモノクルを中指で押し上げた。
「いえ、私もきちんとお伝えすべ」
「いやですわメアリ様、お気になさらず! 出かける前に説明しない兄様が悪いのですから。ということで、メアリ様はお借りしますわね」
行きましょうとメアリの背を優しく押すユリアナ。
背後から「私たちは賓客室の方で待っています」と告げるイアンの声にメアリは「わかりました」と返し、マイペースなユリアナに案内されるがまま回廊を歩いた。
宿舎の扉をくぐり、少し軋んだ音を立てる木製の階段を上る。
そうして「さあ、どうぞ」と廊下の突き当たりにあるユリアナの部屋に通された。
「お邪魔します」
「狭くてごめんなさいね。今お茶を淹れてくるので、座っていてくださいな」
そう言って梯子を模した背もたれの椅子を引くと、寝台脇のナイトテーブルからいそいそとお気に入りのティーセットを取り出す。
そして、すぐに戻ると言い残し、ティーセットを持って部屋を出て行った。