一途な騎士はウブな王女を愛したくてたまらない
メアリは椅子にそっと腰を下ろし、失礼にならない程度に部屋を見回す。
アーチ型の窓から差し込む夕陽に照らされた部屋は、シンプルでスッキリとしている。
寝台とクローゼット、丸いテーブルと椅子が二脚。
大きな家具はそれくらいで、最低限の物しか置かれていない印象だ。
特別に華美なものもなく、ジョシュアと共に暮らしていた自分の部屋に少し似ている気がして、メアリは懐かしい気分になる。
「なんだか、落ち着く……」
ユリウスのこと、戦いのこと。
気がかりは解消されてはいないけれど、部屋にほのかの漂う優しい花の香りの効果も相まって、メアリは肩の力を抜いた。
それから少しの後、ユリアナが熱い紅茶を淹れて戻ってくる。
「火傷しないように気をつけて」
微笑みと共に琥珀色の紅茶をメアリの前に置いた。
「ありがとうございます」
癖のない上品な香りに頬を緩めるメアリを見たユリアナは、懐かしそうに目を細める。
「似てますわね、マリアに」
母の名が紡がれ、メアリはティーカップに指を添えたまま瞼を瞬かせた。