一途な騎士はウブな王女を愛したくてたまらない
「先生、調印式には王様も行かれるの?」
「もちろん。向こうもヴラフォス皇帝が直々に出て来られるようだしね」
ヴラフォス皇帝。
本名をジークムント・イルハザードという。
ヴラフォス帝国は、アクアルーナ王国と同じくグラリア大陸に存在する国家だ。
グラリア大陸はかつて、ディザルト公国という国家を含め四大国が東西南北を分かつような形で、それぞれが均衡を保ちながら自らの国を統治していた。
しかし、十年ほど前、北のヴラフォス帝国が友好関係を保っていたはずの西のディザルト公国に対し襲撃を開始。
瞬く間にその領土を広げ、ディザルト公国は滅びヴラフォスの支配下に置かれることとなった。
そして現在、アクアルーナ王国とフォレスタット王国は同盟関係を結んでおり、両国を脅かさんとするヴラフォス帝国を牽制。
それでも国境付近での小競り合いは絶えず、特に水の都と呼ばれるアクアルーナは気候も穏やかで海上輸送により交易が盛んであることから、ヴラフォス帝国の次なるターゲットになっていた。
それが、ひと月ほど前に事態は急変。