一途な騎士はウブな王女を愛したくてたまらない
ひとりになったメアリは、疲れを取るために寝台に横になる。
(騎士隊長の中に、内通者がいるかもしれない……)
増えてしまった悩みに思わず小さな溜め息を吐き出した。
これから疑いを持ちながら接しなければならないのかと思うと気が重くなる。
眠れば少しは気持ちが切り替わるかもと目を瞑ってはみたものの、ヴラフォス奇襲時の剣を交わす鋭い音と兵たちの猛る声が蘇り落ち着かない。
黒騎士長を追ったユリウスは無事なのか。
せめて予知で視ることができていればと悔やみ、募る不安を抱え、眠れずに寝台の上で寝返りを打った時だ。
──コンコン、と。室内に遠慮がちなノックの音が鳴った。
しかし、扉を叩くそれとは少し違い、どちらかといえば軽さを感じる音。
一体どこからとメアリが身体を起こし寝台から降りたと同時、領主自慢のバラ園が眺められるガラス窓が開いた。
そこに人影を見たメアリは一気に警戒態勢に入り、ソードラックに駆け寄る。
突然の事態に心拍数が上がる中、身を守る為に父の剣に手をかけた瞬間。
「メアリ、落ち着いて。俺だよ」
窓から侵入してきた人物が苦笑して両手を上げた。