一途な騎士はウブな王女を愛したくてたまらない
メアリは信じられない気持ちでユリウスの瞳をじっと見つめ返しながら、浮かんだ疑問を声にする。
「私を、殺すつもりだったの? 父と同じように、罠にはめて」
思えば、メアリがフォンタナに行くことを後押したのもユリウスにとって都合が良かったからなのだろう。
亡き者にする為に誘き出したのかと零した声は滝の音に消されてもおかしくないほどだったが、ユリウスの耳には届いていたようで頭を左右に振ってみせた。
「まさか。俺は君に傷ひとつつけるつもりはない。ザエルはどうだったか知らないけど。とりあえず、俺の仕事は君をヴラフォスに連れて帰ることだ」
「何の為に? 人質ですか?」
自分のせいでアクアルーナが追い詰められるかもしれないことを考え、メアリは唇を噛み締める。
すると、ユリウスはベルトホルダーから下がる剣の柄をメアリに握らせ「チャンスをあげようか」と笑みを消した。
「これで、今すぐ俺を殺せばいい。そうすれば、君の国に巣食う内通者は始末される。ついでに、敵国の皇子も始末できて君は英雄だ」