一途な騎士はウブな王女を愛したくてたまらない
3.価値ある皇子と消えた王女
迷路のように入り組んだ洞窟内は夜光石と呼ばれる鉱石が発光して辺りを神秘的に照らしている。
おかげで松明を手に進む必要もないが、代わりに短剣が手放せない状況にメアリは陥っていた。
噂通り、滝の裏の洞窟には魔物が巣食っていたからだ。
イアンの話では、洞窟は入れないようになっていると聞いたが、実際は簡易的にロープが張っているのみで難無く進み入ることができた。
涼しい洞内は広く水が湧き出ていて、青く輝く池がいくつも見られる。
ごつごつと隆起した天井からは雫が滴り落ち、外套を濡らしながら歩き続けるメアリは、先程ついに出会いたくない魔物と遭遇してしまい短剣を構えながら後ずさった。
「むむ、無理! お願いだからこっちに来ないで!」
本来見るのもおぞましいが、目を逸らしている間に襲われても困る為、メアリは半泣きの状態で首を振る。
百本の足で地を這い、ジリジリと距離を詰めてくるのはジャイアントセンティピートという大男ほどの体長があるムカデの魔物だ。