一途な騎士はウブな王女を愛したくてたまらない
敵国の皇子であるはずのユリウスだが、傷ひとつつけるつもりはないと言っていた通り、ここまでずっと魔物からメアリを守ってきた。
ぞんざいな扱いを受けたのであればいっそユリウスを憎めるのにと、メアリは足を前に進めながらそっと息を吐く。
(それにしても、出口まであとどれほどかかるのかしら……)
道中、迷わず進むユリウスにこの洞窟についてよく知っているのか質問をしたところ、ここはフォレスタットの南西にある山の麓に繋がっている洞窟で、ユリウスが初めてアクアルーナを訪れた時もここを通ってきたとのことだった。
やがて、少し狭いけれど岩で囲まれた空間に辿り着き、二人は腰を下ろす。
メアリは疲れを吐き出すよう深く呼吸し、荷袋から干し肉とパンを取り出すユリウスをぼんやりと眺めた。
ユリウスが肩から掛けている荷袋は、洞窟の入り口に隠すように置かれていたものだ。
自分を連れ出しに来る前に用意していたのだろうと予想し、メアリはまた溜め息を落とした。
そこでふと、ユリウスの左手首が赤く腫れていることに気づく。