一途な騎士はウブな王女を愛したくてたまらない


それにしても、とメアリはユリウスの怪我がこれだけで済んでいることに感心しつつ包帯を取り出す。

何せ、さきほどのオーガ以外は息を乱すこともなく相手にしていた。

ユリウスの強さを改めて感じ、メアリは結び目を作る。


「はい、完了です。一応痛みが出にくいように巻いておいたけど、動かしにくかったら教えてください」


ぎこちなくはあったが、メアリが僅かに口元に笑みを浮かべると、ユリウスは「ああ」とだけ答えてパンを齧った。

感謝してほしかったわけではない。

けれど、今までのユリウスならばと思うとメアリの胸はチクリと針で刺したような痛みを伴う。

その痛みと、そこから滲み出る寂しさを誤魔化したくて、メアリはいただきますと声に出してから千切ったパンを口に入れた。




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