一途な騎士はウブな王女を愛したくてたまらない
──しばらくして、先に食べ終えたユリウスが飲み水の入った革袋をメアリに渡すと「見張っておくから少し眠っておいた方がいい」と話す。
「ユリウスは寝ないの?」
「俺は二、三日寝なくても大丈夫。君は慣れない旅と戦闘で疲れてるだろう」
諭され、メアリは疲れた足をそっと摩ると、教えてはくれないかもと思いつつ尋ねる。
「ザエル黒騎士長を追ってから、ユリウスはどうしてたの?」
無視をされるか、うまくかわされるか。
そんな想像をしながらの質問だったが、予想に反してユリウスはサラッと答えた。
「計画と違うと問い質していたんだ」
「計画?」
首を捻るメアリに、ユリウスは語る。
ユリウスの計画では、フォンタナにメアリをおびき出し、フォレスタットを経由して追っ手を巻きつつヴラフォス首都に向かう予定だった。
しかし、モデストは私設騎士たちに奇襲を決行させ、メアリを捕らえようとしたのだ。
それはユリウスも知らされていないことだったと。
「まあ、俺を試す目的もあったようだけど」
自嘲し、ユリウスは前髪から覗く瞳を伏せる。