一途な騎士はウブな王女を愛したくてたまらない
「試すって、何を?」
「俺が……騎士であるのか、皇子であるのかを」
「そんな……」
部下であり味方であるはずのモデストが、なぜ皇子を疑うのか。
そう考えた時、メアリの中に疑問が生まれる。
そもそも、なぜ皇子であるユリウスが敵国に潜入することになったのか。
そのような危険なことは、それこそ私設騎士の者の役目ではないのかと眉根を寄せた。
しかし、そこには深い事情があるようにも思え、さすがにズケズケと立ち入る勇気を持てないメアリは洞窟を歩き続ける中で気になっていた別の疑問を口にする。
「なぜ、私を殺すのではなく、連れて行くの?」
父の命を奪ったはずのヴラフォス。
アクアルーナという国が狙いならば、王女であるメアリも邪魔なはずだ。
洞窟の入り口で、人質にするのかと尋ねた時は答えはもらえなかった。
けれど、今度は殺せなどという悲しい流れにはならず、ユリウスは視線を揺らし話すことを迷った素振りを見せたものの、やがて口を開く。
「君の力をモデスト……いや、皇帝が必要としているからだ」
メアリの力。
それは紛うことなく予知の力のことだ。