一途な騎士はウブな王女を愛したくてたまらない
この布告は首都だけでなく、アクアルーナ国内の街や村でも行われ、調印式前ではあるものの、休戦条約の受諾により国境付近の紛争は沈静化。
国民はひと時でも平和が訪れることを喜んでいた。
メアリもその一人で、普段からアクアルーナの騎士たちと接している分安堵も深い。
ただ、体調の思わしくない国王が調印式に出るのは心配だった。
少し前、メアリはジョシュアから、調印式が国境平原近くにある街【ロウ】で行われると聞いたのを思い出す。
このアクアルーナ首都からロウの街までは馬を急ぎ走らせても五日はかかる。
「王の体調が心配かい?」
憂いが顔に出ていたメアリの肩を優しく抱くジョシュア。
メアリは小さく頷いてみせた。
国王のことはもちろんだが、国王が出るなら近衛騎士の皆も共に行くはずだ。
休戦によりヴラフォス兵との戦闘はなくなるとはいえ、街道沿いの森にはジャバウォックと呼ばれる長い爪と強靭な顎で人を襲う凶暴な魔物が出没することもある。
彼らが手練れであることは百も承知だが、襲われて怪我などしたらと心配はつきない。