一途な騎士はウブな王女を愛したくてたまらない
「ヴラフォス皇帝は知っていたんですね」
「正確には、マリア王妃が巫女の血筋であることをモデストが突き止めた。だとすれば、力がある故に狙われることがないようにと誘拐に見せかけていて、実は王女は生きている可能性があると」
そこで、かねてより潜入していたユリウスに、探せという王命が下された。
けれどなかなか手掛かりが得られずにいたのだが……。
『私は、メアリ・ローゼンライト・アクアルーナ。私の命を脅かす者から守る為、父メイナードと母マリアが愛を持って隠したただひとりの子です』
あの日、ユリウスの前でメアリが王女だと名乗り出たのだ。
「それで、思い出した。君が野盗に襲われた時、助けに入る俺やセオ、野盗たちの行動を全て見通したかのように動いていたのを」
本当にマリアの娘であるというなら、あの時視えたのではないかと考え、ユリウスは、同じく潜入している部下に頼み、牢獄に捕らえられている野盗に聞いたらしい。
何か気付いたことはなかったかと。
「そうしたら、ひとりだけ、君の瞳の色が変わったのを見たと話したやつがいた」
その者に覚えがあったメアリは、飲まずにずっと手にしていた革袋を強く握る。