一途な騎士はウブな王女を愛したくてたまらない


「ヴラフォス皇帝は知っていたんですね」

「正確には、マリア王妃が巫女の血筋であることをモデストが突き止めた。だとすれば、力がある故に狙われることがないようにと誘拐に見せかけていて、実は王女は生きている可能性があると」


そこで、かねてより潜入していたユリウスに、探せという王命が下された。

けれどなかなか手掛かりが得られずにいたのだが……。


『私は、メアリ・ローゼンライト・アクアルーナ。私の命を脅かす者から守る為、父メイナードと母マリアが愛を持って隠したただひとりの子です』


あの日、ユリウスの前でメアリが王女だと名乗り出たのだ。


「それで、思い出した。君が野盗に襲われた時、助けに入る俺やセオ、野盗たちの行動を全て見通したかのように動いていたのを」


本当にマリアの娘であるというなら、あの時視えたのではないかと考え、ユリウスは、同じく潜入している部下に頼み、牢獄に捕らえられている野盗に聞いたらしい。

何か気付いたことはなかったかと。


「そうしたら、ひとりだけ、君の瞳の色が変わったのを見たと話したやつがいた」


その者に覚えがあったメアリは、飲まずにずっと手にしていた革袋を強く握る。


< 190 / 330 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop